バックギャモン世界選手権からの帰り、関西空港でパスポートのチェックを受けるために並んでいると、前後の団体客が懐かしい訛りでしゃべっている。「高知の方ですか」と尋ねると「どこに行ってもそう聞かれる」と笑って答えてくれた。
方言というものは、そこで生まれ育った人が聞けば、間違えようがない。高知に関してはその傾向がひときわ顕著かもしれない。そう私は高知で生まれ育った。
8月3日に里帰りし、翌日は墓参りに行った。小山を一登りした場所にあって、その険しい坂を登っている際に、母親から、68歳になる叔父がバイクでこの坂を駆け上がると聞いて、私は仰天した。コンクリートで固められた部分があるものの、幅50、60センチしかないような、人が登るための山道である。断じてバイク用ではない。
後ほど叔父本人に尋ねると、一度こけたことがあると、楽しそうに教えてくれた。冗談ではない。そのまま真っ逆さまに落ちて、大事故になるかもしれないような道だが、幸いにもかすり傷程度で済んだそうだ。いやはや。
夕飯に居酒屋で塩タタキを食べた。カツオのタタキをポン酢とニンニクでなく、塩とわさびで味わうのだ。ごまかしの利かない、本当の素材勝負である。美味かったのだが、少し残念なことにあぶり具合が強かった。あまり良いネタでなかったのかもしれない。
小説『坂の上の雲』の影響で、『二百三高地』という映画に興味を持ったところ、実家のすぐ近くにある「愛宕劇場」で上映中だったのだ。何という偶然。
ひなびた映画館で、上映直前になると受付のおっちゃんがどこかに行って無人になる。恐らく映写機をまわしに行ったのだろう。その後に入ってきた客はどこにお金を置いていいのか分からず、右往左往している(笑)。
映画は3時間にもおよぶ、気合いの入った力作だった。乃木希典は旅順攻略戦の最中に長男の戦死を聞き、日本の夫人宛に電報を打つ。「名誉の戦死を遂げる。喜ぶべし」と淡々と述べる乃木大将は、嘉永2年生まれの「武士」であった。
墓へ至る上り坂
劇場の看板