戦いで主導権を握ることは重要だ。私の大好きな本『読めばテニスが強くなる』(原題 Winning ugly)には次のような内容が書いてあった。「試合前が始まる前にネットの高さをチェックするだけでも主導権を握ることが出来る。何故ならあなたが測り終えないとゲームが始まらないからだ」
先日の名人戦を振り返ってみよう。試合の開始時刻に私は着席したが、中継の調整等で中々ゲームが始まらない。しばらく後、着席した望月さんがダイスカップも何度も試し振りを行い、望月さんのオッケーが出て試合は始まった。すなわち望月さんが完全に主導権を握っていた。
主導権を握ることにどれほどの効力があるだろう? 測定したデータを私は持っておらず具体的に語ることはできないが、0.1%でも勝率を上げるなら十分に価値がある。勝負とは0.1%アップさせる努力をたくさん行った側が勝つのだから。
ここには大きな鍵がある。対戦相手が何も感じなければ、ほとんど効力はないだろう。そして実際に全く気にかけないプレイヤーは存在する。しかしほんの少しでもそれを気にかけるなら、この主導権を握る行為は明らかに有効だ。
では、一切気にかけないように努力すればよいのか? この対処方法は誤りだ。元々気になる事柄を、敢えて気にしないようにすることは不可能だろう。気にかけないプレイヤーはナチュラルに気にしないのであり、訓練の結果そうなったわけではない。
そこで試合時刻を過ぎても始まらない場合の対処方法として、次のような事柄が考えられる。
1.席を外し、準備ができたら電話で連絡してもらう。
2.ルーティーンのあらかじめ用意しておき、それを実行し始める。例えば自分の憶えているリファレンスポジションを実際にボードへ並べる。
3.一人でゲームを始める(ウォームアップ)。
4.周囲の人と馬鹿話をする。
もちろん開始時刻に着席していることが前提である。開始時刻を過ぎても始まらなければ、上記の事柄を行えばよいだろう。
追伸: 『読めばテニスが強くなる』(ブラッドギルバード著、日本文化出版)は勝負をする全ての人にお勧めです。